俺の家には古びた日本人形がある。
黒髪は絹のように美しく、白い顔は薄暗がりの中でもぼんやりと浮かび上がる。着物は色褪せてはいるが、それでも上品さを失っていない。
その人形は祖母の家の奥座敷に飾られていた。
「絶対に触っちゃいけないよ」
小さい頃、祖母は繰り返しそう言った。
なぜなら――
人形には「魂」が入っているから……
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俺は佐伯良太(さえき りょうた)、二十八歳。
最近、祖母が亡くなった。
一人暮らしをしていた祖母の遺品整理をするため、俺は久しぶりに田舎の家へ戻ることになった。
大きな屋敷は昔のままだった。廊下のきしむ音、畳の匂い、古時計の針の音――すべてが懐かしく、そして少しだけ不気味だった。
遺品整理を進めるうち、奥座敷の押し入れから、例の日本人形が出てきた。
祖母の言いつけを守り、俺はその人形に触れたことがなかった。
だが、その夜、異変が起きた。
深夜、ふと目が覚めた。
何かの気配を感じた。
暗闇の中、畳の上に何かが立っている。
人形だった。
昼間は確かに押し入れにしまったはずの日本人形が、俺の布団のすぐそばに立っていた。
喉が凍りつく。
「……誰が置いた?」
まさか、祖母の霊が――?
いや、そんなはずはない。
俺は震える手で人形を持ち上げ、元の押し入れに戻した。
それなのに。
翌朝、また同じ場所に立っていた。
その日から、夢の中にも人形が現れるようになった。
誰もいないはずの部屋の隅で、人形がこちらを見ている。
某番組は「プラモデルには作った人の魂が宿る」って言ってたから、プラモデルでも似た現象が起きるのかも